医療関係者や患者さんからのメッセージ
医療関係者のキモチ
セルフマネジメントの重要性
布谷麻耶先生 武庫川女子大学看護学部
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)と診断された方へ
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)と
診断されて間もない頃は、
どうしたらよいのか、わからないこと、
不安なことがたくさんあると思います。
でも、あなたは、一人ぼっちではありません。
これから病気とうまく付き合っていくためには、
まず病気と治療について知ることが必要です。
炎症性腸疾患(潰瘍性大腸炎・クローン病)は、症状が落ち着いている状態を維持するためのセルフマネジメントが重要です。
セルフマネジメントとは、慢性疾患をお持ちの患者さんが自分の心身の状態をよりよく保つために必要な療養に取り組むことを指します。
炎症性腸疾患(IBD)は、10~20歳代で発症することが多く、炎症によって症状が悪化する「再燃」と、比較的症状が落ち着いている「寛解」を繰り返すため、病状が悪化すると就学や就労、家庭生活への影響が大きくなります。
また、日々の食事や疲れ、ストレスなど生活の状態そのものが病気の悪化に関わります。そのため、症状が落ち着いている状態の「寛解期」においても患者さんがセルフマネジメントを行いながら、疾患とうまく付き合っていく方法を見つけることが重要です。
セルフマネジメントを行うことで、長期に渡り症状が落ち着いている状態(寛解)を維持することができ、生活の質(QOL・Quality of Life)が高まることが報告されています。
患者さんのセルフマネジメントには、患者さんが疾患について正しく理解すること、治療選択に関わり、決定した治療を遵守すること、再燃につながる症状の早期発見、食事やストレスの管理などが含まれます。
患者さんと医療関係者が共に医療上の意思決定を行う
SDM(共同意思決定)とセルフマネジメント
SDM(Shared Decision Making・共同意思決定)とは、患者さんと医療関係者が共に医療上の意思決定を行うプロセスを指します。
例えば、炎症性腸疾患(IBD)の治療では、早期からバイオ製剤による積極的な治療を受けるべきか、がん化するおそれのある腸や肛門病変の切除術を受けるべきか、といった判断に迷う治療の選択肢が多くあります。
また、同じ疾患であっても患者さんによって病状や治療の効果、副作用が異なることが多く、治療選択は、患者さんそれぞれの価値観や好みによることが多いといわれています。そのため、医療関係者だけで治療法を決めることは難しく、患者さんと医療関係者が話し合い、治療を決めるSDM(共同意思決定)が重要となります。
SDMは炎症性腸疾患(IBD)患者さんのセルフマネジメントに含まれるものであり、患者さんが治療選択に関わり、納得して決めた治療はその後の遵守率が高く、治療への満足度も高いことが報告されています。