病気と治療について理解しよう
クローン病
クローン病が原因の痔瘻
クローン病が原因の痔瘻は、若い人に多く、いろんな場所に複数できます。
1.クローン病が原因の痔瘻と一般的な痔瘻との違い
①原因は何が違うの?
クローン病は、消化管の内壁に原因不明の腫れやただれが生じる病気ですが、直腸や肛門にも症状が発生し、それが痔瘻の原因となることがあります。
クローン病で炎症が
起こる場所
②症状は何が違うの?
クローン病では、痔瘻以外にも切れ痔じや肛門が狭くなるなどさまざまな肛門の病気を引き起こす可能性があります。また、一般的な痔瘻じろうが肛門の後ろ側にできるのに対し、クローン病の痔瘻はできる場所が一定ではなく、膿うみの通り道の形も複雑で太いといった特徴があります(表)。
③クローン病の痔瘻になりやすい人は?
クローン病の痔瘻は、若い人に多いことが特徴です。
表.一般的な痔瘻とクローン病の痔瘻の違い
一般的な痔瘻 | クローン病の痔瘻 | |
---|---|---|
原因 | 肛門腺への感染 | クローン病による直腸・肛門のただれ |
原発口 | 肛門陰窩 | クローン病による直腸・肛門の穴 |
できやすい場所 | 肛門の後ろ側 | さまざま |
発症数 | 1つのことが多い | 複数発症する |
膿の通り道 | 細い | 太く、壁が薄い、形が複雑 |
タイプ | 皮膚表面にできるものが多い | 深い場所にできるものが多い |
日本大腸肛門病学会編:肛門疾患(痔核・痔瘻・裂肛)・直腸脱診療ガイドライン2020年版改訂第2版, 南江堂, 東京, p44, 2020を元に作成
関連情報
2.クローン病について
クローン病は消化管全体に腫れやただれが起こる病気です。腫れやただれは口から食道、胃、十二指腸、直腸、肛門にまで起こります。クローン病の原因はまだ正確にはわかっていませんが、食事や喫煙習慣などの環境因子と遺伝的素因が背景となって、免疫異常を引き起こした結果ではないかと考えられています。完治する病気ではありませんが、最近は治療薬も増え、普通の生活を送れるようになっています。また、国の指定難病であり、医療費助成を受けることもできます。
クローン病の主な症状
腹痛・下痢
体重減少・発熱
3.クローン病が原因の痔瘻の治療法
クローン病の痔瘻はどうやって治すの?
クローン病が原因の痔瘻の治療には、クローン病そのものに対する治療と痔瘻の治療があります。
①クローン病に対する治療(内科的治療)
クローン病の内科的治療には、サリチル酸製剤などの抗菌薬や栄養療法、免疫調節薬や生物学的製剤を用いた薬物治療などがあります。肛門に対しては、痔で使われる軟膏や座薬が使われます。
②肛門部病変に対する治療(外科治療)
一般的な痔瘻と同様、痔瘻のタイプに応じた手術が行われます。
クローン病の痔瘻は、単純で浅い痔瘻に対しては、膿の通り道を切り開きたまった膿を取り除く切開解放術が行われます。また、複雑で深い位置にある痔瘻に対しては、シートン法がよく行われます。
クローン病でのシートン法は、膿の通り道にゴム糸を通してしばり、膿を出すことを目的にしています。しかし通常の痔瘻のシートン法とは異なり、ゴムをゆるくしばることで、さらに肛門括約筋に負荷をかけないようにします。
他にも、膿の通り道にヒトの幹細胞を注入する治療(再生医療による治療)もあります。
これらの治療を行っても、症状によってはストーマ(人工肛門)を造設することもあります。