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潰瘍性大腸炎Q&A
潰瘍性大腸炎でお悩みの方へ
日常生活や妊娠・出産について解説

【監修】横浜市立大学附属市民総合医療センター
炎症性腸疾患(IBD)センター 内科担当部長
国崎玲子 先生

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「これからの日常生活をどのように送ればいいのか」
「妊娠・出産への影響はあるのか」
という疑問をもつ潰瘍性大腸炎患者さんも多いのではないでしょうか?

ここでは、潰瘍性大腸炎の患者さんによくある質問に回答します。
病気や治療以外にも日常生活や学校生活、生活習慣や妊娠・出産などについて広く解説します。

1.病気・治療・薬

症状が落ち着いても治療は必要?

潰瘍性大腸炎の治療の基本は薬物療法です。治療を中断してしまうと再燃しやすくなることから、継続した治療が必要な疾患であると考えられます。潰瘍性大腸炎の治療の目的は、腸に炎症のない、<粘膜の寛解状態>を保つことです。潰瘍性大腸炎は腸のやけどのような病気ですから、粘膜に炎症を繰り返してしまうと治りづらくなってしまいます。
さらに多くの病気で、長期間、炎症を繰り返したり炎症が持続すると癌化が増えることが知られています。潰瘍性大腸炎は、若い患者さんに発症し罹病期間が長い病気ですので、症状が落ち着いていても、治療で腸の炎症を抑えて寛解状態を維持し、将来の癌化を予防することも、潰瘍性大腸炎の重要な治療目標の一つです。継続する治療の種類や量は患者さんによって異なりますので、主治医の指示に従い、治療を自己中断することがないようにしましょう。

ステロイドを長期間使い続けるの?

ステロイド剤の投与方法は、病気によって異なります。活動期の潰瘍性大腸炎に対して、ステロイドは決められた投与量、投与期間で使用するのは、基本的な治療です、一方で、ステロイドは今ある大腸の炎症を抑えますが、再燃を予防する効果はないため、治療開始後は必ず減量し、長期間使用することはありません。
副作用のことが注目されやすい傾向がありますが、上手に使用すれば活動期の症状のすみやかな改善が期待できるなど高い治療効果を発揮してくれる点を認識しておきましょう。

ステロイド剤を使った治療は、「5-アミノサリチル酸(5-ASA)製剤」の効果が充分に発揮されない中等度以上の症例で現在の治療と併用する場合や、劇症型や重症のケースでは治療当初から点滴静注して使用する場合があります。寛解の導入時、つまり病気の勢いが強い活動期に炎症を抑えるためにステロイドを使用することで症状の改善をはかります。

ステロイド剤を使用する際には、症状の重症度や体重から投与量を設定し、初期投与量を2週間程度継続した後、患者さんの状態を見ながら8~10週間で徐々に薬の量を減らして中止していきます。

薬物治療の副作用にはどのように対応したらいいの?

内科治療では症状を抑える目的で薬物治療を行いますが、副作用に注意しなければなりません。副作用とは、薬を使用することによって、症状を抑える効果以外に生じる作用のことを言います。副作用は薬を使用すると必ず起こるものではないものですが、日頃から定期的なチェックは必要です。

薬の働き方によって副作用の症状もそれぞれ異なります。そもそも薬が体にあわないケースで起きてしまう過敏症や、薬の働きが強く出すぎてしまう副作用があります。副作用の症状には個人差があり、人によってはアナフィラキシーなどの重い副作用が生じる場合もあるため注意が必要です。

このように、薬を使用するにあたり、起こりやすい副作用を知っておくことはとても大事です。早い段階でご自身が異常に気づき、副作用がひどくなる前に病院を受診して治療できるため、万が一の時にも早急に対応できるでしょう。

また、薬を服用してから体に異常を感じたら、医師や薬剤師に相談する事を徹底してください。自己判断で薬の服用をやめたり、量を減らしてしまうと治療している病気を悪化させてしまうこともあるため、しっかりと報告し、治療を継続・中止もしくは変更などの指示を仰ぎましょう。

医師や薬剤師に相談するときには、どの薬が原因で起きている症状なのかをスムーズに判断するため、「何という薬を」「どのくらいの量・期間使用しているか」「どのような症状が出たか」を説明できるようにしましょう。

他の薬やサプリメントも飲んでいても大丈夫?

他の薬やサプリメントを服用していること、もしくは服用を検討していることを医師や薬剤師に相談して判断を仰ぎましょう。1種類では問題のない薬でも、薬と薬の組み合わせによって、相互作用という良くない影響が出る組み合わせがあります。そのため自己判断だけで複数の薬やサプリメントを服用せずに、相互作用がないか確認してもらうことをおすすめします。

薬と薬の飲み合わせによって、考えられる相互作用は以下のようなものがあります。

・薬の効き目が強くなりすぎるケース
薬と薬の効果が重複すると体の中で薬の代謝・排泄を遅らせてしまうなど、薬の効果が強くあらわれてしまう副作用が出やすくなります。また、腎臓や肝臓の障害を起こすことがあります。

・薬の効き目が弱くなるケース
薬と薬の働きが拮抗することで、薬が分解されやすくなるなど、薬の効き目が弱まってしまうケースがあります。本来発揮するはずの薬の効果が抑えられ、病気が治りにくくなるため注意が必要です。

かかりつけ病院以外の他の病院で処方された薬を服用している場合やドラッグストアなどで販売されている一般用医療品(市販薬)や健康食品、サプリメントを利用している場合には、主治医や薬剤師に相談すると良いでしょう。

潰瘍性大腸炎だと他の病気にもかかりやすくなるの?

潰瘍性大腸炎だというだけで、体が弱くなったり、他の病気にかかりやすくなることはありません。また、リウマチなどの膠原病にかかりやすいこともありません。
ステロイド剤をはじめとする、免疫を抑制する治療を受けている場合は、わずかですが感染症にかかるリスクが上がりますので、感染症の予防に留意が必要です。
また、潰瘍性大腸炎の炎症が腸管に長期に持続すると、大腸癌のリスクが上がりますので、癌化を防ぐためにも適切な潰瘍性大腸炎の治療を継続することと、定期的な内視鏡検査が必要です。

潰瘍性大腸炎はストレスで悪化するの?

どうして潰瘍性大腸炎になるのか、潰瘍性大腸炎が再燃するのか、いまだに原因は分かっていません。アトピー性皮膚炎や喘息と同様に、一般に免疫が関わる疾患では、ストレスが病気を悪化させる方向に作用すると考えられていますが、ストレスだけが潰瘍性大腸炎の悪化の原因ではありません。心身ともに休めるように充分な睡眠時間を持ち、趣味の時間を持つなど、ストレスをためない生活を心がけると良いでしょう。気になることや心配事があるときは、身近な家族や主治医のほか、メンタルケアの専門機関に相談することも勧められます。

どこで潰瘍性大腸炎の情報は得られるの?

まずは主治医などかかりつけの病院の医療関係者や、知りたい内容について相談してみましょう。 その他、「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班や、NPO法人 日本潰瘍性大腸炎協会(CCFJ)などが、ホームページで患者向けの情報を発信したり、情報誌の発行や、定期的な市民公開講座を開催したりしています。「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」班のホームページでは、病気に関するパンフレットや、妊娠や手術など専門性の高い情報についての患者さん向け冊子も、直接ダウンロードできて便利です。
保健所が勉強会を実施する場合もあるので、調べてみると良いでしょう。

他の潰瘍性大腸炎患者さんと情報交換できるの?

全国各地の患者会では、患者さん同士で情報交換する場を提供しています。他の患者さんとの交流は、病気に関する悩みや不安を共有する機会となります。患者会の情報はインターネットで調べられるほか、各都道府県にいる「難病コーディネーター」に、患者会について尋ねてみるのも良いでしょう。

潰瘍性大腸炎患者への金銭面以外での社会支援は何かあるの?

「ヘルプマーク」といわれ、潰瘍性大腸炎の患者さんだけでなく、外見から援助や配慮を必要としていることの分からない方が援助を得られやすくするためのマークがあり、全国で広まり始めています。潰瘍性大腸炎の患者さんもヘルプマークを活用することができます。

生物学的製剤を使っていて軽症になった場合、自己負担はどうなるの?

生物学的製剤は高額であるため、適切に手続きを行っていただければ、「軽症高額」に該当し、軽症になっても医療費助成の対象になります。
さらに、指定難病の医療費助成制度には、「高額かつ長期」の制度があります。これは、「高額かつ長期」の認定申請を行う日の属する月以前の12ヵ月の間に、「月ごとの医療費総額が5万円を超える月が年間6回以上」あれば、医療費の月の支払額の上限が下がる制度です。
(詳しくはこちらをご覧ください)。
自分が該当するかどうか分からない場合、難病情報センターのホームページで確認してみて下さい。

https://www.nanbyou.or.jp/entry/5460
難病情報センターホームページ(2024年10月アクセス)から引用

2.日常生活

外出時のトイレ対策って?

外出先のトイレの場所を事前に確認しておくと安心です。最近では、トイレの場所を検索できるウェブサイトなどがあるので活用してみましょう。

運動はしてもいいの?

体調が悪いときを除いて、運動を厳しく制限する必要はありません。運動はストレス発散にもなり、趣味として適度な運動を楽しんでいる患者さんは多くいらっしゃいます。疲労が残らない程度の運動を心がけましょう。
ステロイド剤の内服中は、骨折リスクが上がり筋肉も付きづらくなりますので、筋肉や骨に負担のかかる運動は控えますが、ウォーキングなどの軽い運動を継続することが勧められます。

旅行するときに気を付けることって?

症状が落ち着いているときであれば、過度に心配することはありません。気心知れた仲間との旅行はストレス発散にもなります。常用薬を準備するほか、疲れがたまらないよう無理のない旅程にしましょう。海外旅行など旅行が長期にわたる場合は事前に主治医に相談し、薬が不足しないように努めましょう。また、持参薬を証明する英文の『薬剤携行証明書』や、処方せんのコピー、お薬手帳等を用意しておくと安心です。

潰瘍性大腸炎では、災害時への特別な準備が必要?

災害時にはかかりつけの医療機関や薬局に行けるとは限りません。お薬手帳や、服用している薬を記したメモを携帯しておくと、かかりつけ以外の医療機関であっても、必要な医薬品を正確に伝えることができます。災害時や、突然受診できなくなった場合などに備えて、数週間分の薬のストックを手元にもてるように、主治医と相談するのも良いでしょう。また、災害用の携帯用トイレを準備しておくと安心でしょう。

3.学生生活

学校生活で気を付けることって?

潰瘍性大腸炎は若い世代に発症するため、きちんと病気を治めて、希望の勉強をすること、希望の仕事ができることは、病気を治療する目標として極めて大事です。
症状が落ち着いている<寛解期>には、学校生活に大きな制限はありません。体育も給食も、皆さんと同じです。
腸に炎症がある<活動期>には、授業中や試験中に急にトイレに行きたくなったり、体育の授業を見学したりすることもあるでしょう。あらかじめ担任や保健の先生に病気について説明し、症状をしっかりと伝え、学校生活を送りやすいよう配慮してもらうことも大事です。
<ステロイド剤の内服中>には、感染症に注意し、筋肉や骨に過度の負担がかかる激しい運動は控えるなどの配慮をします。
病気が悪化し、重症や難治化して<長期入院>が必要な時期には、中学生以下のお子さんは、院内学級を利用するなどの工夫が考えられます。高校生以上の場合は、主治医と学校の先生で相談してもらい、クラスメートに遅れないよう、別途課題を用意してもらうなどの工夫もできるでしょう。潰瘍性大腸炎のお子さんが、病気を克服してご自身の夢を叶えるために前に進むには、親御さん、学校の先生方、主治医を含めた医療関係者などの周囲の大人が協力して、患者さんをチームでサポートすることが必要になります。

部活や習い事は続けても大丈夫?

部活や習い事は無理のない範囲であれば続けて構いません。がんばり過ぎて睡眠や休息が不十分にならないように心がけてください。体調によっては部活や習い事をお休みすることも考えられるので、学校や習い事の先生の理解を得ることも大切です。

進学への影響はあるの?

潰瘍性大腸炎だというだけで、進学に特別に配慮する必要はありません。潰瘍性大腸炎は治療によって病気を安定させることが何より大事ですので、進学先を選ぶときには、定期的な通院が可能で、無理せず通学できることが望ましいです。家族や学校の先生、主治医と相談しながら、自分に合った進学先を選び、進学準備を進めましょう。

就職への影響はあるの?

最近は潰瘍性大腸炎の患者さんが増えたため、一般的に、潰瘍性大腸炎だというだけで就職を断られることは殆どないと思います。実際に患者さんが、潰瘍性大腸炎と付き合いながら普通に働いています。過度に心配する必要はありませんが、病状が不安定で仕事の負荷について不安がある場合は、就職先や主治医と相談しましょう。
また、潰瘍性大腸炎は定期的な通院と治療継続が必要な疾患ですので、就職しても病院を定期受診すること、病気が悪化した場合は病院を受診することがあることなども伝えた上で、きちんと理解が得られる職場を選ぶことが望ましいです。

避けたほうが良い仕事は何かあるの?

多くの潰瘍性大腸炎の患者さん達が、さまざまな職業で活躍しています。潰瘍性大腸炎だというだけで、とくに避けたほうが良い仕事はありません。ただし、過度の疲労や睡眠不足などのストレスが潰瘍性大腸炎を悪化させる一つの原因とする報告もありますので、病状が不安定などで不安のある場合は、極端に多忙な仕事は避けると安心でしょう。また、前述のように、就職しても定期受診できる職場の理解を得られることが、仕事を続けるうえで大切です。

4.生活習慣

食事ではどんなことに気をつければいいの?

今まで多くの研究が行われていますが、現時点では、明らかに潰瘍性大腸炎を発症させたり悪化することが立証された、特定の食事は分かっていません。そのため、潰瘍性大腸炎だというだけで、特に食事を制限する必要はありません。バランスの良い食生活を心がけ、年齢や生活習慣に応じて必要な栄養量を摂るようにしましょう。食事に関する潰瘍性大腸炎患者さん向けのウェブサイトも参考になります。
ただし、潰瘍性大腸炎を発症する原因がまだ分かっていないこと、恐らく患者さんによって病気の原因が異なると推測されることから、もし特定の食事をとることで病気が悪化すると感じている方は、その食品を避けると良いでしょう。
頻回の下痢や血便など、症状が悪化したときには、刺激物を避け、消化の良い食事が勧められます。主治医や栄養士にも相談しましょう。

お酒は飲んでも大丈夫?

症状が落ち着いている場合、飲酒は問題ないと言われています。ただし、アルコールはもともと下痢を増加させる作用があるので、症状が悪化している活動期には下痢や出血が増えるため、お酒は控えることが望ましいです。

タバコを吸っても大丈夫?

喫煙によって、潰瘍性大腸炎が悪化するという報告はありません。ただし、喫煙歴があることが、潰瘍性大腸炎の発症の危険因子であることが報告されています。健康に悪影響があることも考慮すると、喫煙は控えたほうが良いでしょう。

5.月経・妊娠・出産・授乳

月経への影響はあるの?

潰瘍性大腸炎に限らず、女性の患者さんで病気が悪化して体調が不良になると、月経が不順になったり止まったりすることがありますが、多くの場合は体調の回復により月経も回復します。また、ステロイド剤の内服中は、ホルモン剤であるため月経にも影響し、月経が不順になったり止まりますが、やはり薬剤の中止によって元に戻ります。
症状が落ち着いていたりステロイド剤をやめても、月経が回復しないなど気になる症状がある場合は、他の病気がある可能性もありますので、婦人科に相談することが勧められます。

普通の女性と同じように妊娠・出産できる?

潰瘍性大腸炎であっても、寛解期であれば一般の女性との妊娠率に差はなく、出産にも病気による悪影響はありません。できれば3ヶ月以上寛解維持した状態であれば、妊娠中に再燃が起こりにくいと考えられています。

しかし病気が落ち着いていない状態(活動期)では、女性の患者さんは妊娠しづらくなる可能性が指摘されています。活動期に妊娠した場合は、流産や早産、低出生体重児などのリスクが若干高くなるため、り、お母さんも、妊娠中および産後に病気が悪化したまま経過することが増えることから、適切に治療を行ったい寛解を維持した上で、計画的に妊娠することが望ましいです。

もし妊娠中に再燃したら、妊娠をしていない場合と同様に治療が行われます。また、妊娠中に病状が悪化してしまい外科的手術が必要となった場合、母体や胎児に大きな負担がかかってしまいます。 そのため、潰瘍性大腸炎の患者さんは普通の女性と同じように妊娠・出産できるものの、リスクを避けるために病気を落ち着かせておくことが重要です。 

患者さんが男性の場合、パートナーの妊娠に影響はあるの?

男性の患者さんが潰瘍性大腸炎だというだけで、パートナーの妊娠に影響することはありません。また、多くの潰瘍性大腸炎治療薬は、一部の新薬を除いて、パートナーの妊娠に明らかな悪影響を及ぼさないと考えられています。
男性患者さんがサラゾスルファピリジンの内服中は、精子の数が一時的に減少しパートナーは妊娠しづらくなりますが、中止すれば2~3か月で元に回復し、永久不妊になることはありません。
投与を受けている薬によっては、ごくわずかですが影響が報告されている薬剤もありますので、パートナーの妊娠を考えている男性患者さんも、事前に主治医に相談しましょう。