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潰瘍性大腸炎、クローン病と共に歩む

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病気と治療について理解しよう

潰瘍性大腸炎にはどんなタイプがあるの?
炎症の範囲、病気の経過について解説!

【監修】横浜市立大学附属市民総合医療センター
炎症性腸疾患(IBD)センター 内科担当部長
国崎玲子 先生

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潰瘍性⼤腸炎では、適切な治療をするために炎症の範囲、過去の病気の経過、現在の腸炎の重症度を評価します。これらは治療法の決定のみならず、特定疾患受給者証の申請にも必要となる重要な情報です。

潰瘍性大腸炎の2つの病期

潰瘍性大腸炎には活動期と寛解期の2つの時期があり、潰瘍性大腸炎はその2つの時期を繰り返す疾患といわれます。

活動期と寛解期

活動期は⾎便の症状があり、内視鏡検査では腸の粘膜に「びらん」や「潰瘍」といった、ただれや傷を認める状態です。寛解期は活動期の症状がおさまり、腸の粘膜からびらんや潰瘍が消えた状態が維持されている時期のことです。

潰瘍性大腸炎の病変の拡がりによる3分類

過去に最も広がった炎症の範囲により、主に「直腸炎型」、「左側大腸炎型」、「全大腸炎型」の3つに分類されます。

図1 炎症の範囲(病変の広がり)による病型分類

炎症の範囲により、主に「直腸炎型」、「左側大腸炎型」、「全大腸炎型」の3つに分類されます。

  • 直腸炎型
    直腸炎型直腸炎型

    肛門に近い直腸のみに
    病変(炎症)が認められる型

  • 左側大腸炎型
    左側大腸炎型左側大腸炎型

    病変(炎症)が
    脾彎曲部()までの型

  • 全大腸炎型
    全大腸炎型全大腸炎型

    病変(炎症)が脾彎曲部を
    越えて広がっている型

日比紀文:チーム医療につなげる!IBD診療ビジュアルテキスト(日比紀文/監),羊土社,東京,pp.44-48,2016

直腸炎型

直腸炎型とは、炎症が肛門に近い直腸だけに原局しているタイプです。直腸以外の粘膜は正常です。内服薬などの全身に対する治療に加えて、坐剤などの局所製剤が特に有効です。

左側大腸炎型

左側大腸炎型とは、炎症が脾彎曲部(ひわんきょくぶ)まで炎症が拡がっているタイプです。炎症は脾彎曲部を超えておらず、横行結腸の左側に炎症が起きることが特徴です。内服薬などの全身に対する治療に加えて、注腸製剤などの局所製剤が有効です。

全大腸炎型

全大腸炎型とは、炎症が脾彎曲部やS状結腸、横行結腸など大腸全体に拡がっているものです。大腸全体に炎症が広がると、坐剤や注腸などの局所製剤だけは治療が困難で、内服薬や血球成分除去療法、注射剤などによる治療が必要です。

潰瘍性大腸炎の臨床的な重症度の3分類

重症度は、排便回数や血便、発熱、炎症などの状態から、軽症、中等症、重症の3つに分類されます。重症の中でも特に症状が激しく重篤で、一定以上の基準を満たす場合は「劇症」となります。重症度の評価基準を詳しく解説します。

表 臨床的重症度よる分類
重症 中等症 軽症
1)排便回数 6回以上 重症と軽症との中間 4回以下
2)顕血便 (+++) (+)~(―)
3)発熱 37.5℃以上 (―)
4)頻脈 90/分以上 (―)
5)貧血 Hb10g/dL 以下 (―)
6)赤沈※1
またはCRP※2
30mm/h以上
3.0mg/dL以上
正常
正常
  • ※1 赤沈:

    赤血球沈降速度。赤血球の沈む速度のこと

  • ※2 CRP:

    C-リアクティブ・プロテイン。体内で炎症や細胞の破壊などが起こると肝臓で生成され血中で増加するタンパク質のこと。

令和3年度 改訂版(令和4年3月31日)潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針
(厚生労働省「難治性炎症性腸管障害に関する調査研究」久松班)

顕血便

顕血便の判断基準は以下のように+、ーを用いて表記されます。

(ー):血便はみられない。
(+):排便の半数以下で便にわずかに血液が付着している。
(++):ほとんどの排便時にあきらかに血液が混入している。
(+++):便の大部分が血液。
つまり上記の表から軽症の場合は、血便がない、あるいは排便時にわずかに血液が付着している状態であることが読み取れます。

劇症

劇症とは重症の中でも特に症状が激しく重篤なものを指します。発生の経過により急性電撃型と再燃劇症型の2つに分類されます。次の項目にすべて当てはまる場合は劇症と診断されます。

①重症の診断基準を満たしている。
②1日に15回以上の血性下痢が続いている。
③38度以上の持続する高熱がある。
④白血球数が10,000/mm³以上ある。
⑤強い腹痛がある。

重症

重症と判断される基準は上記の表のうち、(1)排便回数と(2)顕血便の条件に必ず当てはまる必要があります。また、全身症状である(3)発熱か(4)頻脈のどちらかを条件を満たし、かつ全6項目のうち、4項目以上に重症に当てはまった場合は重症と判断されます。

中等症

中等症は重症と軽症の中間にあたるものを言います。

軽症

軽症とは臨床的重症度による分類のうち、全6項目をすべて軽症にあたる条件を満たしているものを指します。

潰瘍性大腸炎の内視鏡的重症度

内視鏡検査では、内視鏡で観察した範囲のうち、もっとも炎症の強いところで重症度を判定します。状態によって軽度、中等度、強度の3つに分けられます。

1)正常粘膜
【潰瘍性大腸炎のタイプ】内視鏡所見による分類 1)正常粘膜
2)軽度
【潰瘍性大腸炎のタイプ】内視鏡所見による分類 2)軽度
3)中等度
【潰瘍性大腸炎のタイプ】内視鏡所見による分類 3)中等度
4)強度
【潰瘍性大腸炎のタイプ】内視鏡所見による分類 4)強度

de Lange T, et al. : BMC Gastroenterol, 4 : 9, 2004

正常(寛解)

潰瘍性大腸炎の炎症がない粘膜、あるいは過去に炎症があっても、現在は炎症が完全に消失し、一見して正常の粘膜と見分けがつかない、あるいは瘢痕(傷跡)のみを認める状態。

軽度

軽度では、粘膜に炎症が起こると粘膜の一部が充血して赤くなる発赤(ほっせき)や、浮腫(むくみ)が見られます。また、正常であれば粘膜に血管が透けて見える状態が、炎症により見えにくくなり、いわゆる血管透見像の消失が起こります。

中等度

中等度では炎症が悪化し、びらんや潰瘍などの病変がみられます。また、易出血性(いしゅっけつせい)つまり粘膜に触れることですぐに出血してしまう状態が認められます。

強度

強度は広範囲に炎症が拡大している状態です。潰瘍が多発し、自然出血している箇所も見受けられます。

臨床経過による4分類

潰瘍性大腸炎は、臨床経過によって以下の4つに分類されます。

  • 再燃寛解型は、腸炎の再燃と寛解を繰り返すものです
  • 慢性持続型は、初回の症状が起こってから6ヵ月以上、腸炎が活動期にあるものです
  • 急性劇症型は、きわめて激しい症状で発症します
  • 初回発作型は、初回に症状が1度起こったのみのものですが、将来的に再燃寛解型に移行する可能性があります
臨床経過による4分類

【もっとくわしく!】潰瘍性大腸炎と助成金

一言で「潰瘍性大腸炎」といっても、患者さんそれぞれの症状や状態はちがいます。各々の患者さんに合う治療法を提供するために有用となるのが、前述のような病型分類と、重症度分類です。厚生労働省の研究班が発行している「潰瘍性⼤腸炎・クローン病 診断基準・治療指針1)」では、病期(活動期または寛解期)、重症度(軽症、中等症、重症および劇症)、炎症の範囲(直腸炎型あるいは左側または全⼤腸炎型)などを兼ね合わせた治療の指針が示されています。
それだけでなく、医療費の助成を受ける際にも重症度の分類がかかわってきます。

医療費助成制度については、こちらでご紹介していますのでご確認ください。

【出典】
  • 1)

    令和3年度 改訂版(令和4年3月31日)潰瘍性大腸炎・クローン病 診断基準・治療指針
    (厚生労働省「難治性炎症性腸管傷害に関する調査研究」久松班)