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潰瘍性大腸炎の症状とは?

【監修】横浜市立大学附属市民総合医療センター
炎症性腸疾患(IBD)センター 内科担当部長
国崎玲子 先生

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潰瘍性大腸炎は大腸の粘膜に炎症が起こる炎症性腸疾患のひとつです。代表的な症状と腸管や腸管外に起こる合併症について詳しく解説します。

潰瘍性大腸炎の主な症状

潰瘍性大腸炎の主な症状として以下のものがあります。
・血便や粘血便
・しぶり腹
・下痢
・腹痛
以下では、それぞれの症状の説明に加えて、重症度によって症状がどのように変化するのか、という点もあわせて解説します。

  • ※1

    粘血便:粘液(体から分泌される粘り気のある液体)を含む血便

潰瘍性大腸炎の主な症状

潰瘍性⼤腸炎の主な症状:発熱
潰瘍性⼤腸炎の主な症状:腹痛

初期症状の一つが血便・粘血便

潰瘍性大腸炎の代表的な症状のひとつに粘血便が挙げられます。粘血便とは便に血液や粘液(体から分泌される粘り気のある液体)を含む血便であり、見た目は一概に言えませんが、赤いゼリーのようなものが付着している便です。潰瘍性大腸炎になると腸管が損傷することにより、損傷部位より血や粘液が出てくるため、便が血便や粘血便になります。

しぶり腹

しぶり腹とは頻繁に便意をもよおすのに、便がでない、または出ても少量であるという症状です。下腹部の痛みを伴うことや、便意があってトイレに行くのに排便自体は少ないので残便感がある場合もあります。
便秘と症状が似ていますが、便秘との違いは腸に便が溜まっているかどうかです。便秘は腸管の動きの低下や便中の水分減少による便の硬化などにより排便が上手くできない状態です。しぶり腹の場合、直腸に便が溜まっていなくても直腸粘膜の炎症の刺激により便意が発生することで、トイレに行っても便が出ません。しぶり腹と便秘の根本的な違いをあらかじめ認識しておきましょう。

下痢

潰瘍性大腸炎では、粘膜の炎症部分から浸出液が排出される、あるいは炎症のため水分が正常に吸収できず、便に含まれる水分量が増えることで下痢になります。他にも、食べた物を移動させる腸管の蠕動運動(ぜんどううんどう)が活発になることで、大腸に便をためる力が落ちることが原因として挙げられます。
また、重度の潰瘍性大腸炎では腸管内の出血の量も多くなり、便より血液の量が多くなることで血性の下痢になる場合もあります。

腹痛

潰瘍性大腸炎では、直腸に炎症があると、肛門の内側や直腸付近が強く痛むことがあります。それ以外にも、炎症や、ガスの貯留、炎症により便が上手く出せずに溜まるため、腹部全体の様々な部位に腹痛を生じることがあります。潰瘍性大腸炎の重症の再燃時には、腹痛が強く、口をきくのもつらくなることがあります。

重症度によって症状が変化

潰瘍性⼤腸炎の症状は、大腸の炎症の範囲と重症度によって変わります。軽症では⾎便は少量ですが、重症だと排便回数は増え、真っ赤な⾎便や、強い腹痛、発熱、倦怠感(けんたいかん、だるさ)、体重減少、貧⾎などの症状がみられることもあります。
また、「軽度の腹痛や下血だからまだ大丈夫」「もっとひどくなったら病院に行こう」と考えるのは危険です。潰瘍性大腸炎は放置しておくと症状が進行し、重症化してしまいます。そのため、放置せずに症状が軽くても主治医と対処法を相談しておき、正しい治療をしていきましょう。

潰瘍性大腸炎の主な合併症

上記の主な症状以外にも、潰瘍性大腸炎では、腸管や腸管外に合併症を伴うことがあります。潰瘍性大腸炎の合併症は目から足先まで範囲が広いため、普段と違うと違和感を覚えたらかかりつけの医師に相談しましょう。

主な腸管合併症

腸管合併症には、炎症が悪化することにより生じる大量出血や、頻度は稀ですが、大腸穿孔(せんこう)や、炎症が長期に持続することで生じる大腸狭窄(きょうさく)などがあります。

中毒性巨大結腸症

中毒性巨大結腸症は、大腸に強い炎症が持続することで、大腸の神経が麻痺して活動を停止することで、大腸内でガスや毒素(おなら)などが溜まり大腸が巨大に膨んでいく病気です。重症の潰瘍性大腸炎の治療中に、突然、腹部の膨満感が出現した時は要注意です。中毒性結腸症を発症すると、生命にかかわる危険が極めて高いため、大腸を切除する緊急手術が必要です。

主な腸管合併症

大腸穿孔

大腸穿孔とは大腸に穴があいた状態を言います。穿孔した場所を通じて、食べたものや便が体内(正確には腹腔内)に漏れ出し、腹膜炎を起こし、生命に関わるため、緊急手術が必要となります。

大腸狭窄

大腸狭窄とは、腸の炎症が抑えられず持続することで腸管が狭くなり、食べたものや便が正常に腸管を通過しにくくなっている状態です。そのため、狭窄した場所を通過するときに痛みを生じることがあります。さらに狭窄が進むと、食べ物が通らなくなる腸閉塞(イレウス)という状態になり、激痛を伴うようになります。潰瘍性大腸炎では稀な合併症です。

主な腸管外合併症

潰瘍性大腸炎の合併症は腸管以外でも関節や皮膚、眼などに起こる場合があります。本文中には、主だったものだけを記載します。

関節炎

関節炎とは関節の中で炎症が起きている状態で、関節の痛みや関節付近の腫れ、関節局部の発熱も見られます。膝、足首、肘、股関節などの大きな関節に炎症をみとめる場合や、背骨、手足の小さな関節に炎症をみとめる場合があります。

具体的に潰瘍性大腸炎では「末梢性脊椎関節炎」という膝や足首などの末梢関節が炎症を起こす場合があります。末梢性脊椎関節炎は主に関節を動かしたときに痛みを生じることが多いです。

主な腸管合併症

皮膚・粘膜病変

アフタ性口内炎

アフタ性口内炎は、大腸の炎症が強い時期に、一般の口内炎と同じような病変を認めることがあります。

結節性紅斑

結節性紅斑は、すねや足首などに痛みと熱感を伴い、赤色や紫色の膨らみが生じる炎症です。一虫刺されのようですが、強い痛みを伴うのが特徴です。結節性紅斑と間接炎が併発する場合もあります。

その他に、壊疽性膿皮症と言って、皮膚にも大腸の潰瘍と同じような潰瘍病変を認めることがあります。皮膚・粘膜病変は、大腸炎に対する治療を行うことで、改善することが一般的です。

眼病変

潰瘍性大腸炎では、虹彩炎、ぶどう膜炎、虹彩毛様体炎などを認めることがあります。虹彩(こうさい)とは眼を構成している部位の一つである、瞳の外縁つまり瞳孔の周りに見える黒いドーナツ型のものです。虹彩炎では光が眩しく見えたり、目が痛くなったり、ぼやけて見えるようになったりします。また、目の腫れや充血、症状がひどいと視力低下を引き起こす場合もあります。眼病変の頻度は低いですが、大腸の炎症が落ちついている時期にも出現します。ステロイド点眼で改善することが多いですが、難治の場合は、生物学的製剤の治療を行うことがあります。

【もっとくわしく!】潰瘍性大腸炎と癌化率

潰瘍性大腸炎は、大腸の炎症の範囲が広い患者さんで、病気にかかっている期間が長くなるほど、また大腸に炎症が続くほど、大腸がんになるリスクが高まるといわれています。日本における潰瘍性大腸炎関連のがんの発生は、発症〜10年は2%未満、10年以上は5%前後、21年以上は10%以上とされていますが 1)、最近では、薬物治療の進歩などによって炎症をコントロールする手段が増えたこともあり、⼤腸がん合併リスクの低下も報告されています 2)

大腸がんは大腸内視鏡検査(ないしきょうけんさ)を行って検査します。大腸がん早期発見のためにも、大腸内視鏡検査はとても重要です。

【出典】
  • 1)

    平井孝ほか:胃と腸, 37(7):887-893, 2002

  • 2)

    松井敏幸ほか:⽇本消化器内視鏡学会雑誌, 56(2):237-249, 2014