診断初期に知りたいキホン
病気と治療について理解しよう
潰瘍性大腸炎はどんな検査をするの?
【監修】横浜市立大学附属市民総合医療センター
炎症性腸疾患(IBD)センター 内科担当部長
国崎玲子 先生
患者さんが初めて症状を発症してから潰瘍性大腸炎と診断されるまでにはいくつかプロセスがあります。今回は潰瘍性大腸炎と確定診断されるまでにどのような検査を行っていくのかを分かりやすく解説します。
検査は血液検査や内視鏡検査などが行われる
繰り返す粘血便や下痢などの症状があり、医師も潰瘍性大腸炎が疑わしいと判断した場合、診断に必要な検査を実施します。例えば血液検査・便培養などの腸管感染症の検査・大腸内視鏡検査・腹部CTやX線造影検査が挙げられます。さまざまな検査を組み合わせることで、総合的に潰瘍性大腸炎の病状を把握します。
1.潰瘍性大腸炎の診断フロー
病院での初回受診の際には、まず医師による問診があります。
ここで重要になるのが、患者さんから医師に伝えられる情報です。
・下痢の回数や血便の有無
・症状がいつ頃から出始めたかなどの自覚している症状
・どれくらい続いているのか(期間)
・最もつらい症状
などについてです。
問診の上で、持続性または反復性の粘血便・血性下痢があり、感染性腸炎など他の疾患の可能性がなく、潰瘍性大腸炎が疑われる場合は検査に移ります。
2.潰瘍性大腸炎の主な検査
潰瘍性大腸炎が疑われる場合は、下記の検査が実施されます。
潰瘍性大腸炎では大きく血液検査・内視鏡検査・レントゲンやCTなどの画像検査を行います。これらの検査よって、病気の範囲や進行の程度を調べていきます。
この項目では、潰瘍性大腸炎で行われる以下の5つの検査について詳しく解説します。
・血液検査
・内視鏡検査
・便検査
・X線検査
・X線CT・MRI検査
潰瘍性大腸炎の検査方法①血液検査
血液検査では炎症や貧血、栄養状態や、薬剤などによる副作用、その他全身状態などを調べます。
潰瘍性大腸炎の検査方法②内視鏡検査
潰瘍性大腸炎の診断や治療方針の決定、病状の評価、大腸がん検診に、内視鏡検査(ないしきょうけんさ)は欠かせません。肛門から内視鏡を入れて大腸内を確認する大腸内視鏡検査と、組織を採取し顕微鏡で観察する「生検検査」が行われます。
潰瘍性大腸炎の検査方法③便検査
便検査では主に、感染性腸炎(かんせんせいちょうえん)という他の疾患によって炎症が起こっていないことを確認します。実際に下血を症状とする病気は潰瘍性大腸炎の他に、直腸がん・感染性腸炎・痔・大腸憩室炎などいくつも種類があります。診断時には便検査を用いてこれらの病気の可能性を除外し、潰瘍性大腸炎の区別を行います。
潰瘍性大腸炎の検査方法④X線検査
腹部の単純X線検査を行うことで、腸管合併症の有無を確認します大腸の便やガスの状態を 把握します。その他、内視鏡検査の代わりにバリウムを用いたX線造影検査が行われることもあります。
潰瘍性大腸炎の検査方法⑤X線CT ・MRI検査
腸管の状態や腸管合併症の確認のために、施設によっては、X線CT※2・MRI※3の検査が行われることもあります。X線CTはX線撮影を応用したもので、MRIは磁気を用いて撮影を行います。
- ※2 CT:
Computed Tomography,コンピューター断層撮影
- ※3 MRI:
Magnetic Resonance Imaging、磁気共鳴画像
3.潰瘍性大腸炎と診断される基準
潰瘍性大腸炎では様々な検査が行われますが、その検査結果はどのように活用されるのでしょうか。ここではその一つとなる、潰瘍性大腸炎の診断基準についてみていきます。
日本では厚生労働省の研究班が「潰瘍性⼤腸炎・クローン病 診断基準・治療指針」を発行し、毎年改訂しています。
いくつかの条件を満たせば潰瘍性大腸炎と診断されることになっています。
診断は大きく3つに分けられています。
感染性腸炎などの他の疾患の可能性も除かれる必要があります。このように、潰瘍性大腸炎の診断には各種検査が欠かせません。検査には心理的・身体的負担をともなうものもありますが、正しい診断、ひいては治療のために、必要な検査を受けましょう。